星を継ぐもの02

 もう、原作もへったくれもなしの星野節炸裂状態です。

星を継ぐもの 02
 星野之宣著 J.P.ホーガン原作 小学館ビックコミック刊
 星を継ぐもの 02
 2011年12月5日 初版第1刷発行
 ISBN978-4-09-184320-5

 さあ、どうしたものでしょう。
 前回の原作との相違する点をさらに広げて独自の展開を行っています。 この記事を書くために表題となっている原作の「星を継ぐもの」だけではなく、三部作となる続編の「ガニメデのやさしい巨人」「巨人たちの星」を参照しないとならない状態になっています。

 まず、当初から地球の月とミネルヴァの月は同じであり、ミネルヴァが破壊され放浪の旅に出た月が地球の引力につかまり、衛星系を形成したという話から始まりますが、これはシリーズ初刊であり、コミックスのタイトルでもある「星を継ぐもの」の巻末近く、最終の謎解きの答えとして出てくるエピソードで、原作のストーリーと順序がまったく入れ替わってしまっています。
 また、原作中では地球に5万年前まで衛星が存在しなかったという事実を提示しただけでそこから提起される種々の論理的帰結を導き出すものについては原作では一切記載がありません。

 すこし細かい指摘になりお見苦しい点があると思いますが、個別の事案に対する相違を少し列挙してみたいと思います。

ミネルヴァの植物の再現
コミックス中では見つかったガニメデ宇宙船の捕獲した動物の檻の下の敷物にあった植物の再現映像として紹介されるが、原作では二作目の「ガニメデの優しい巨人」において、それらの中から種を見つけたダン・チェッカーが栽培を行い再生したことになっている。コミックスで再生担当のアンリと呼ばれる男性は原作では担当者でもなんでもない研究チームの一員であるアンリ・ルソンと思われる。
ガニメアンの宇宙船探索
コミックスでは前巻の流れからガニメデに移動したクリスとダンチェッカーが探索に参加しているが、原作では先行して到着していたジュピターIVの部隊により探索が行われ、ガニメアンの遺体などを見つけるため発見と探索の描写内容が全く異なったものになってしまった。
実際の探索で見つける前に頑丈なドアをこじ開ける描写があるが、コミックス中では未探査領域から先に滑り落ちたクリスとダンチェッカーが発見したことになっており、原作ではまだ彼らは地球に居て情報を得て地球上で検討を行っている状況であり、原作と完全に異なる。
シャピアロン号と接触
ガニメアンの宇宙船である「シャピアロン号」と接触し、生きたガニメアンと交流が始まった。
原作では二作目にあたる「ガニメデのやさしい巨人」の初頭に出てくるエピソードである。原作中ではすでにハントらはガニメデに到着しているので遭遇の瞬間に立ち会っているシーンで、遣わされた小型船のスクリーン中でガニメアンの姿を見ることになるが、コミックスでは映像信号として直接送り込まれて再生され、彼らの姿を多くのスタッフが見る事になる。
コミックスではいきなりシャピアロン号に移動して交流が図られるが原作ではまず小型船のスクリーンを介して開始、その後にシャピアロン号へ訪問である。また、訪問時にダンチェッカーは本人の希望によりそのメンバーに入らないのだが、コミックス側ではまったく逆で、自ら志願して訪問している。
月が無かった時代の地球上の生物の進化の推論
この部分は完全に星野節全開といえます。原作にはこのような考察に関する記述は一切見当たりません。コミックスの中でも相当数のページを割いていることから星野氏がもっともやりたかった・描きたかった部分だと思われます。
この48ページにも及ぶ第10話・恐竜パラドックスは原作には全く無い、星野氏の創作によるものです。
ブローヒリオ登場
前巻のニールス・スヴェレンセンに続き、ジェヴレンの親玉であるブローヒリオ閣下(笑)も登場してしまいます。原作では三作目の「巨人たちの星」でやっと登場なのですが、トリックスターとして平和委員会を登場させていることからその延長で進めているのでしょう。
ガニメアンの肌が肌色
登場するガニメアンの肌がカバーのイラストを見る限り、いわゆる肌色をしています。 原作では薄いグレイとはっきりと記述があるにもかかわらず、あえて違う色にしたのでしょうか。それともガミラス星人のように、ちょっと後から肌色が悪くなるのかもしれません。
ゾラックの端末の描写の違い
これも二作目で登場するシーンなのですが、ガニメアンと交流するための情報端末をシャピアロン号に移乗してから装着するのですが、原作ではヘッドバンドという表現がなされています。しかし、コミックスでは最近流行のブルートゥースを使ったイヤホンセットのような描写に。
また、これらのヘッドセット様のものは地球人向けに急ごしらえしたちょっと不細工に見える記述が原作にはあるのですが、その点についての言及は一切コミックス側にはありません。

 他人の仕事をあげつらうのが趣味ではないのですが、ここまで元のストーリーやプロットと異なる上に、重要な描写が大きく変更されてしまうと違和感を通り越して迷子の子猫状態になりそうです。

 さあ、このあと、どのように収拾を付けてくれるのか、作者の力量の見所ともいえるでしょう。
 前回も書きましたが星野宣之作品として読めば面白いんですが、ホーガン作品として見てしまうとかなり残念な状態です。

既刊の記事はこちら
星を継ぐもの01

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