確定か不確定か

 最近ちょっと賑やかしかったので確認の意味も込めて通読。
ハイゼンベルクの顕微鏡
 石井 茂著 日経BP刊
 ハイゼンベルクの顕微鏡
 不確定性原理は超えられるか
 2006年1月5日 初版1刷 発行
 ISBN4-8222-8233-3

 世界は不連続だという量子力学の世界では余りにも有名なハイゼンベルクの不確定性原理。
 不確定性原理と小澤の不等式などに至るまでの言及される人物は蒼々たるメンバーで、タイトルに冠せられているハイゼンベルクを始め、ボーア、アインシュタイン、パウリ、シュレディンガー、ド・ブロイ、ゾンマーフェルト、ヒルベルト、ディラック、プランク、ラザフォード、ボーム、ボルンなどなど、理論物理学や量子力学に関連して一度は耳にした人たちが続々登場してきます。
 20世紀初頭から大躍進した量子力学にからめて歴史的な経緯を交えて、登場人物がどのように関わっていたかなどを非常に分りやすく説明してくれています。アインシュタインなどが原爆開発に関わった経緯やナチスドイツとの関連なども描かれており、単なる物理学の解説書ではありません。
 ハイゼンベルクの不等式
 εqηp ≧ h/4π
 測定する物体の位置の誤差と位置を測定する事により生じた運動量の乱れの積はh/4πより小さくならないという事を示しており、不等式の形をしています。
 これに対して小澤の不等式は
 εqηp + σqηp pεq ≧ h/4π
という不等式になり項が増えています。この式によりハイゼンベルクの不確定性原理を超えて正確に位置と運動量という二つの物理量を誤差なく測定できるという意味が秘められています。
 実際に、量子暗号などの世界ではすでに活用されていて、EPR相関の矛盾を解消し、実用的な絶対に破られない暗号として実装され始めています。
 物語中にも記載があるのですが、ハイゼンベルクは1932年に31歳の若さでノーベル物理学賞を受賞しました。しかし、受賞理由が不確定性原理ではなく、「パラとオルトという水素の発見に導いた量子力学論を創ったこと」という、全く異なる受賞理由だったということです。これはアインシュタインも同じで、相対性理論により受賞したのではないという、当時のノーベル賞委員会のプライドと言うか皮肉とも思える物理学に対する偏見を垣間見ることが出来ます。
 この本で、相間さんと呼ばれる人種が居るのをはじめて知りました。
 これは「相対性理論は間違っている」という主張する人たちを指す言葉だそうです。
 さすがに量子力学は間違っていると主張する「量間さん」は聞いたことがないそうですが、小澤の不等式が日本人発ということから、市中の自称物理学者たちが「量間さん」になってきそうな気がします。

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