できたてを食べると、ホコホコして美味しいですよね。
大阪ではもともと「天ぷら」というのは魚のすり身でつなぎに小麦粉をまぜた蒲鉾のタネを平たく円形にし、素揚げしたいわゆる「さつまあげ」を指す言葉でした。これは関西から西の地域に通用する言葉のようです。絵にあるような白天、赤天(地方では平天)のそれに対して関東の天ぷらと呼ばれる料理は「揚げ物(あげもん)」と呼びます。いまでは「揚げ物」も「天ぷら」として通用しますが、本来は大阪弁では別の呼称の料理なのです。
さて、揚げ物もとい(笑)天ぷらですが、東西でけっこうこだわりがあって相容れないもののようです。まさに水と油。
関東の天ぷらと言えばごま油ベースの揚げ油です。卵を冷水に溶いた卵水に小麦粉を加えた衣を付けて揚げます。揚げた天ぷらを食すときは天つゆに浸けていただきます。
関西人が許せないのはまず、ごま油で揚げる事でしょう。関東の天ぷらは「くどい」と言われる原因がまずこのごま油にありそうです。さらに衣に卵が入っています。ごま油と卵のおかげで、揚げ色はきつね色になります。とどめを刺すのが天つゆでしょう。なんでさっくり揚げた天ぷらを汁に浸して食べなければならないのか全く解せないのです。
これに対して関西では揚げ油はごま油を使わず、茅の実や綿実油など癖の少ない油(現在はサラダ油になっている?)を使い、衣に卵を使わないことで、うっすらと黄色くなった色づき具合に揚げる事で食べごろになります。関東の天ぷらに比べてはるかに色が薄い白い色に近い色をしています。また、天つゆは使わず塩をつけていただくのが本式です。
関東人からすると卵も使わず、出汁もつけずに塩だけでケチ臭いと見られます(笑)。
どうも天ぷらのタネに差があることに起因するようで、関西は比較的野菜類を揚げる事が多く、江戸では江戸前の魚介類を揚げる事が多かった事からそれぞれの油の使い方や食べ方が違うようになったのではないかと想像されます。
私は生まれ育ちも大阪人ですので、東京の天ぷらはちょっと…。「わて、揚げ物(あげもん)のほうが美味しい思います。」と。
[参考文献]
牧村史陽編 講談社学術文庫 大阪ことば事典第13刷
アゲモン【揚げ物】(名)
テンプラ【天婦羅・天麩羅】(名)
の項の記述を参照・引用