お寿司と言えば握り寿司が当たり前になってしまいました。気の短い江戸っ子が考えついた握り鮨が全盛です。
江戸時代、大坂上方ではバッテラ、雀寿司、穴子の棒寿司の様な押鮓がメインとして食されてきましたが、さすがに現代では握り鮓の簡便さに負けて箱鮓をいただける店は少なくなってしまいました。
箱鮓は作ってから2〜3時間頃からが味がなじんで食べごろで、その後の時間が経過しても味が変わらないのが特徴です。作ってすぐに頂くものではない所が、気の短い人には向きませんね。
4寸の押型に半分ほど酢飯を詰め、その上に甘辛く下煮した椎茸を広げます。そしてその上に再度酢飯をのせて、鯛の刺身、鮑の薄切り、鳥貝、海老、穴子、玉子の厚焼きなどをのせて押し蓋をのせて圧します。型から出して縦3列・横4段の計12個に切り分けます。ネタは底に敷いて作るやり方と、この説明のように最後にのせるやり方と2種類があります。ネタによって作り方を使い分けるようです。
握り鮨は客が醤油(溜り醤油・紫)をつけて味を決めますが、箱鮓の場合は出来上がった段階で味が完成しているので何もつけたりせずそのまま頂きます。寿司に梅酢に漬けた紅生姜を添えるのもこの箱鮓が始まりのようです。
そうそう、大阪ではこの箱鮓の記載のように、おすしに「鮓」の字を当てるのが本来の記載です。江戸前は鮨の字を当てるのですが、昨今は縁起をかつぐ意味で「寿司」の字を東西とも使う場合が多くなったような気がします。
温鮓(ぬくずし)
実際は全面に錦糸卵がのっており、蒸し上げてから供される
また、この時期(寒い時期)特有の大阪で食べる事の出来る鮓として「ぬくずし(温鮓)」があります。椎茸、穴子、縮み麩などを味付けしたものにキクラゲを加えて酢飯に混ぜ、蒸篭で蒸し上げた後、錦糸卵と紅生姜をのせて頂きます。
熱い酢飯で酢の臭いが立ちそうなのですが以外や以外、全然そんな事も無く美味しく頂けます。暖かい酢飯の鮓も美味しいですよ。
大坂鮓の老舗 船場淡路町「吉野寿司」
寒くなると「むし寿司(ぬくずし)」がメニューに加わる(12月〜3月の限定)
創業は天保12年(1841)という吉野寿司
[参考資料]
牧村史陽編 講談社学術文庫 大阪ことば事典第13刷
ハコズシ【箱鮓】(名)および ヌクズシ【温鮓】(名)の項を参照・引用
小生の卒業学校の大先輩です
船場の老舗店舗です