かやくごはん

 以前にも顔を出していましたが、もう少し詳しく見てみましょう。

かやく御飯
 かやく御飯
 おかずの要らない立派な一食の食事として頂ける

 かやく御飯。と、聞いてアブナイものが入っているのを想像した人は残念でした。「主食+主食」や、「うどん・そば」で、「かやく」という言葉はすでに紹介していますが、改めて「かやく御飯」単品で取り上げてみました。
 「かやく」とは「加薬」と漢字表記されまして、漢方薬の処方で主要な薬品の効能を補強したり飲み易くするために加える補助薬を指しています。かやく御飯の場合、メインがコメで、具が加薬というわけです。
 かやく御飯は関東で言う「五目めし(ごはん)」と良く似た物と思われがちですが、製法が全くちがいます。言うなれば「五目めし」は炊きあがった白御飯に味のついた具を混ぜ込み、ひと蒸らしして出来上がるので『混ぜ御飯』なのですが、「かやく御飯」はお米を炊き込む際にすでに細かく刻んだごぼう(ごんぼ)、ニンジン、油揚げ(あげさん)、こんにゃくを入れて、醤油と煮干しの出汁で炊き上げるため、『炊き込み御飯』なのです。
 私の家でも良く作りますが、かやく御飯はおかずもごはんも「一緒くた」になっていることで、おかずも要らずそれだけで食事として完結してしまうので、作る側からは大変楽ができるようです。かやくご飯が食事に出ると、おかずの要らない状態ですので、汁物とせいぜい漬け物が有ればおいしくいただける状態になります。
 船場の商家などの冬場はごちそうとして、かやくごはんに塩ブリや塩鮭のアラ、ごぼう、ニンジン、こんにゃく(かやく御飯と同じ具ですね)を具とした酒粕で仕立てた粕汁を食べたそうです。
 粕汁に良く似たものに船場汁というのがあります。同じく塩鯖や塩鮭などの身を頂いた残りのアラと大根と昆布を水から炊き上げた汁物で、塩味は殆ど塩魚からでてくるもので間に合います。最後に醤油で味を整えます。
 上手に残り物をちゃんとした料理に仕立て上げたわけで、倹約家の大阪商人らしい献立です。

[参考文献]
 牧村史陽編 講談社学術文庫 大阪ことば事典第13刷
 カヤクゴハン【加薬御飯】(名)の項を参照
 石毛直道著 小学館 上方食談 2001年11月20日初版
 社団法人農山漁村文化協会 「日本の生活全集 大阪編集委員会」編 日本の食生活全集27
 聞き書 大阪の食事 1991年2月20日第1刷

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