著者名を見てピンときた人は鋭い!
ガルリ・ガスパロフ 著
羽生 善治 解説、染田屋 茂 訳
日経BP社 刊
ディープ・シンキング
人工知能の思考を読む
2017年11月28日 第1版第1刷発行
ISBN 978-4-8222-5514-1
かつてIBMのチェス対戦コンピューターである「ディープ・ブルー」と対戦した当時のチェス世界チャンピオン「グランドマスター」であるガスパロフによる当時の詳しい状況のほか、人工知能に対する考察などが盛り込まれた一冊。
原題は”DEEP THINKING Where Machine Intelligence Ends and Human Creativity Begins”で、原題と邦題がちょっと違っています。昨今の人工知能ブームからこんな邦題をつけたのでしょうか。
様々なチェスプレイヤー、競技(スポーツ)としてのチェス、対戦相手としてのコンピューターの登場、強くなるプログラム、そして単なるブルートフォースアタックを行うコンピュータープログラムだったと知ったディープブルーへの回想、そしてその先の本当の機械の持つ知性へと話が膨らんで行きます。
本のページの多くはチェス・プレイヤーだったガスパロフによる人やコンピューターとの対戦の様子や当時の心理状況等に多く割かれていますが、人工知能に対する考察も多く示されています。
最終章でガスパロフが「機械の進歩によって創造性を発揮する余裕が生まれたおかげで、人間はより人間らしくなれると述べたが、創造性以上に人間である事に意味があるのだ。」という言葉が彼の「人間」としてのプライドと、機械知性に対する希望と期待を示しているようでした。