鉄道技術

 一応、おことわり。私は鉄道マニアではありません(笑)。

図解・鉄道の科学
 宮本昌幸 図解・鉄道の科学
 安全・快適・高速・省エネ運転のしくみ
 講談社ブルーバックス B-1520
 2006年6月20日 第1刷発行
 ISBN4-06-257520-5

 日常、何気なく利用している鉄道ですが、そのシステム全体を維持管理する努力たるや並大抵ではない事が予想されます。運行に関するものは除き、列車が走る、曲がる、止まるなどの基本的な動作にどれほどの技術がつぎ込まれているのかがよく解ります。
 「へぇ」とか「は〜!」となる事が私にとっては多くありました。
 「鉄道の科学」するというタイトル通り、鉄道システムを検証可能な数値的データを示して解説してくれており。図版も豊富に掲載され丁寧な分りやすい内容となっています。
 実際に数値データが出てくるので、いままで「なんとなく○○」だったのが、具体的な数値が示されて「○○だったのか」となる例が多くありました.
 あくまでも私見ですが私の好奇心を満たしてくれた例を紹介してみます。

■0.2mmの直径差
 台車に装着されている車輪ですが、車軸を挟んで2つあります。
 車輪に傷が入ったり、フラットな部分ができたりすると削って滑らかな面に戻すわけなのですが、新幹線の場合、その左右の車輪の直径差はなんと0.2mm以下が許容値。
 現行の300系以降の新幹線の車輪の新品時の直径860mmに対して整備時にこの精度で切削加工するわけです。加工機械の精度があるとはいえワークの大きさを考えるとなかなか簡単にそろえる事のできる数値ではないと感じます。

■分厚い窓ガラスはどれぐらい厚いのか
 乗車時に新幹線のガラスも結構分厚い気がしていたのですが、実はガラス3層+間の空気層1層を加えて全体として19.3mmもあります。
 外側からフィルムの挟み込まれた合わせガラス(5mm+0.3mm+3mm)+空気層(6mm)+強化ガラス(5mm)の構成になっています。

■高速走行を実現する秘密
 新幹線では高速走行時のレールと車輪が滑るのを防ぐため、昔の蒸気機関車のような砂撒きが行われているのは全く知りませんでした。粒径0.3mmのセラミックス粒子を毎分30g程度、高速ノズルで直接、車輪直前のレール上に噴射しているそうです。
 新幹線が砂を撒きながら走っているとは…。
 他にもいろいろと細かな工夫の積み重ねで営業速度300km/hを実現しているようです。

■多数決システム
 一般路線はATS、新幹線はATCというシステムで列車自体が安全な運行を行えるようなシステムを装備しています。新幹線の場合は営業速度200km/h以上という事から人間の判断には頼ることができなかったこともあり、非常に慎重に設計されているようです。
 地上・列車とも3重の冗長系で、そのうちの2つ以上が合致しないと正しい情報として処理しない多数決システムが構築されています。速度情報等の信号はレールを伝って列車に送られるそうで、最近はデジタル式の通信が行われる事が多くなったそうです。

 他にも多数の具体例を示しながら解説されていて非常に興味深く読ませていただきました.
ご存知の方には他愛の無い事なのかもしれませんが、鉄道システムをしっかりと調べた事の無い私に取っては非常に新鮮な一冊でした。

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