毛が三本といわれると、どうもオバケのQ太郎を彷彿させます。
馬場 宏著 新風舎刊
ブラックホールは毛が3本:現代科学発展の歴史と現状
2006年12月5日 初版第1刷
ISBN4-289-00565-9
講談社ブルーバックスの「相対論的宇宙論」を(かなり昔)読んだ時の表現に「ブラックホールは毛が三本」という表現がありました。
恒星の終焉であるブラックホールには3つの特徴しか残らないというのがその主旨です。
その特徴は物理量として「質量」「角運動量」「電荷」の3つしか無いのです。
シュヴァルツシルト半径などで名前を残していますが、このシュヴァルツシルト解は回転しておらず静止した系(角運動量がゼロ)で電荷もゼロという条件の特異解です。これに角運動量を加えるとカー解とよばれるブラックホールのモデルになります。
一番有名なフレーズがタイトルとなっていますが、実際はかなり天文物理だけではなく広範囲にわたり結構シビアな判断をされています。副題の示す通り現代科学を紐解くキーワードがとりあげられ、その歴史的経緯や現状の取組などが紹介されています。範囲が広いだけにやや散漫な所は否めませんが、各章は短くまとめられておりどこからでもつまみ読み出来るようになっていて飽きません。
読み進む中で、α崩壊やβ崩壊という言葉で私は習ったのですが、α壊変・β壊変という言葉になっているのが驚きでした。光学異性体のことも不斉分子やキラルな分子、キラリティーなどに変わっています。用語は時代により変化するものなのですねぇ。
最後に。久々の文字が横組の本を読みました。が、どうも原稿はMS-WORDで書かれているようで、そのままタイプセッタに出力して版下にもってきたのではないかと思われる節があります。一般の書籍と違い、読みにくいと思ったのは括弧や句読点などのいわゆる約物やANK文字との字詰めがしっかりとしておらず、妙な感じがしたのです。また脚注の文字がMSゴシックのような気も(笑)。
内容は面白いのですが、印刷物の体裁としてはちょっと辛いです。