タイトルが示す通りそば打ち男へ対する批判のはずだったのですが…。
残間里江子著 新潮社刊
それでいいのか蕎麦打ち男
2005年 9月25日発行
ISBN4-10-478201-7
いわゆる団塊の世代の男どもへの批判を交えた内容かと読み進んで行くとどうも違います。
なんとなく団塊女から見た団塊男や団塊女へのおかしい所への批判だったのが、途中から団塊の世代に頑張ってほしいエールだったり、団塊の世代ってすごい!という半ば自慢に変わって行ってしまい、終わりに近づくほど読み進むのが辛くなってしまいました。
手にした際の動機というのがこ本のタイトルである「蕎麦打ち男」の意味する所。
2007年危機とかいわれる少し前に出版された本ですが、冒頭の部分で、団塊の世代の男どもは退職や今後の趣味に蕎麦打ちを選ぶ。その自分で打った蕎麦を家族だったり親戚だったりご近所に振る舞う。「どうです?うまいもんでしょ。」という口には出さない自慢と自信をもちながら。趣味をまわりに自慢するものの、いままでそんな事をした事の無かった人。
「蕎麦打ってる場合じゃないでしょ。もっとほかにする事があるんじゃないの?まだまだ頑張れる世代じゃないの?」というのが著者の言い分です。
確かに手打ち蕎麦というのは流行っています。蕎麦という文化を知るためには大変良い事だと思いますし、巧く打てればおいしいそばにもありつける。
蕎麦打ち男に対する批判の主旨は、私には確かにハッとするものがありまして、電子工作をやってちょろちょろと作っていても結局蕎麦打ち男と同じで単なる自慢、自己満足でしか無いのではないか?これは趣味としてやって行くには、どうも寂しい事なのではないか?などと自問してしまったためです。
蕎麦が巧く打てても、蕎麦屋にはなれないというプロ(上野薮蕎麦の店主)の意見。
店舗で提供するには常に一定水準以上の品質の蕎麦を提供するだけでなく、いかに短時間で打ち終わるかといった事から、温かいそばもありますし、そばつゆ、天ぷら、鴨などの具材の調理、仕入れや経営と言った総合的な技術・技能を要求されるからです。
蕎麦打ち名人はあくまでアマチュア。
そこらあたりを勘違いして蕎麦屋を開いて失敗するという話もありました。
いや、耳が痛い。電子工作で言えばハンダづけは名人です。といった所でしょうか。
現役時代には携わっていましたからこのようなプロとは何かという意見は充分承知しています。
電子工作で生計を立てるつもりは毛頭ないのですが、蕎麦打ち男へ対する批判の主旨が、自己満足・自己完結というアタリがなんとなく引っかかります。
と、まあ、かなり凹みながら読み進むと、どうも内容が変わってきまして、団塊の世代に対する批判をくるむように褒め言葉、自慢、激励がだんだんと増えてきます。
団塊女から発したちょっと辛口のお小言の後、「団塊世代よガンバロー!」みたいになってしまいまして、団塊の世代では無い私はすこししらけてしまったのがちょっと残念です。
最後には自分自身の経歴に対する自慢のような内容と、自分自身への激励で締めくくられてしまいました。
「団塊女だって捨てたものじゃないでしょ?」みたいな。
う〜ん、定年退職というイベントは私も遠い先の話ではないので、蕎麦打ち男に象徴される内容に根拠のある批判とこうすれば良いのではないかという提案が見たかったのですが、どうも当てが外れたようです。
とはいえ、団塊世代の考え方や物の見方、行動指針などはある面を的確に突いていると思います。指摘や批判の内容が単なるステレオタイプと言えばそうなのかもしれません。
団塊世代の人、それより手前の人、関係無さそうな世代の人、どの世代が読んでもそれなりに楽しませてくれる本です。
私の場合…電子工作で生計を立ててるな~。
思えば小中時代のラジヲ作りが発端。
無線に興味を覚えたのはワイヤレスマイク。
真空管で作ったらむちゃ飛んだ。で、無線の免許取得へと。
今の仕事の発端は「趣味のハンダ付け」だい
昔から続けてきて、いまも継続している。
「継続は力なり」です。それはすごい事だと思います。
電子工作が趣味という事に対して批判したり揶揄したりするつもりは毛頭ないのです。
ただ、蕎麦打ち男の場合の引っかかりは、趣味で物を作っているというところが同じ。
今にして思い返すと、電子工作と手打ちそばとの違いは成果物について他人が再現できない、ごく周囲の人にしか分かち合えないなどが明確に違います。
手打ちそばに対して、電子工作(製品?)の回路図を公開し、どんどん作ってくださいという居酒屋ガレージ店主さんのスタンスは本当に敬服します。
趣味が高じて仕事になった。
私も似たようなモンです。
職種が代わり、仕事でなくなった分、趣味で没頭できるので楽しめます。基本的に納期も無いし(笑)。
おっ!この本「東成図書館」だ!
>電子工作が趣味という事に対して批判したり揶揄したりする
>つもりは毛頭ないのです
は~い。 よく分かっているつもりです。
誰でも最初は「好きこそものの…」ですから。
そこからプロへの分岐点ってなんでしょうね。
「どれだけ痛い目をしたか」「頭を打った数」かな。
>おっ!この本「東成図書館」だ!
取り寄せすると何処の図書館から来るかいつも楽しみです。中央なら蔵書にあれば直接ですが地域図書館だと、だいたい取り寄せになりますからね。
>そこからプロへの分岐点ってなんでしょうね。
>「どれだけ痛い目をしたか」「頭を打った数」かな。
プロへの道、身体で覚える!ですね。